***いつも笑っていますよね、と彼女が言った。




「佐々木さんて、いつも笑ってますよね」
 何がそんなに楽しいんですか、そう言って、彼女がうつむく。
「どうしたの?何か嫌なことでもあった?」
 たまに話しかけてきたと思ったら、なんとまあ攻撃的。
 そんなことを思いながら、わたしはコーヒーのインサートカップを手に取った。
 ホルダーに差し込み、コーヒーメーカーのボタンを押す。
 ほわり、コーヒーの香りが漂う。
「……何、ってことじゃないんですけど、課長にちょっと言われちゃって…。見てたんでしょう?」
「…ああ、」
 なあんだ、あのことね。
 午前中の資料のことで、そういえばなにやら呼び出されていたっけ。見るからにしょんぼりして戻ってきた彼女を見て、すぐに顔に出る彼女がとてもかわいいと思った。


 怒られたら、しょんぼりする。
 うれしかったら、にこにこと笑う。
 くるくるかわるその表情が、なんてかわいいんだろうと、いつもそう思っていた。


「佐々木さん、わたしのこと見て笑ったでしょう」
「そりゃあまあ、ねえ。…だってあなたかわいいんだもの」
 そう言ってにこりと笑って、コーヒーを注いだカップを口元に。
「なっ…!! なに言ってるんですかっ…」
 すぐに顔を真っ赤にする彼女。そんな彼女を横目に、カップの中の液体を、ごくりとひとくち飲み込んだ。
 うん、いい香り。今日の豆はどこのかな。
「ね、これおいしいね。あなたが買ってきたんでしょ? コーヒー、すきなんだ? センスあるよね」
「っていうか、佐々木さんわたしの質問に答えてないですよ」
 さっきまでしょんぼりむっつりしていた顔が、今は真っ赤でいきいきと。
 なーんて、ほほえましいのかしら。
「プッ」
「なあんですかあ!」
「ううん、やっぱりかわいいなって」
 そう言ってわたしは笑って、一気にコーヒーを飲み干した。
 さ、午後もがんばりますか。
「あっ、ちょっとまだ質問に――」
  ぷくーと頬を膨らませ、答えてない、なんてさわぐから。
「あなたがそこに居るからよ」
 なーんて言って、わたしはその場を後にした。


 たくさんわらって、たくさん怒られて、たくさんへこんで、強くなれ。

 かわいいかわいい後輩ちゃん、はやく大きくおなりなさい。


 がんばれ、働く女の子!






おわり





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9/17のブログより



がんばれ、新卒!って感じで。前途ある有望な若者のお手本になれるように、日々努力、なのです、はい!



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