**レッツポジティブ、そうだなあ**
さむいっていうりゆうだけでこんなことがゆるされていいのだろうかいやよくはない。
「どうしたの?体重計に乗ったまま硬直しちゃって、てかじゃま。トイレいきたい」
ううむとうなりながら風呂あがり。
ぱんついっちょーで体重計にどーんとのって、そして腕を組みつつうつむいている、そんなわたしを、ぐい、と押しのけ、わたしを寄せたむこうのトイレに直行する彼女。
「ねーちょっとこんなあられもない姿で悩ましげにうなっている恋人を、、そーんならんぼーにあつかわないでよっていうかあんたちょっとトイレ近すぎ」
だあってさむいんだもんトイレもちかくなるっしょーなんて言いながら、彼女は鼻歌交じりに扉を開く。
「トイレが近いってことは、いまものすごく毒素が排出されるってことでだね」
「あーはいはいわかりましたわかりましたー。出ーたーよコレ、はいはいレッツ★ポジティブレッポジ、はやくトイレはいんなよもれるっしょ」
「ポジティブいいよーあなどれないよーっていうか、あんたこそはやく服きなよ、そんなさりげない乳だしてつったってないで」
「さりげない乳とかいってんじゃねーよ」
とかぶつくさいいながら、わたしはそんな薄情なこいびとに背を向けて着替えを手に取る。
「うひゃ、」
うっかりへんな声がでた。
「ちょっと、うしろから揉まないでよ、なによその手は」
うしろからひやりとつめたい手。
やさしい彼女の、ふわふわとしたてのひらが、わたしのふくよかなおなかに添えられる。
「もむんならおっぱいにしなよ色気のない」
振り返ってぶつくさ文句をいってやると、そのてのひらの主は、顔のとなりでけらけら笑う。
「おっぱいは揉みなれてるからいいわー。ふむふむこのおなか。たしかにちょっと肉付きがいいかもねー」
なんて言って、さらにふわふわゆるゆるとてのひらを、わたしのおなかの上で動かす。
「……ちょっと、やめて」
「んーまあまあいいからいいから。ひやこーい。やわらかーい。ね、どう?おなかもまれるのって興奮する?」
しねーよばーか、と、ふうとためいきひとつつき、背中にへばりついてる彼女をそのままにして、わたしはズボンを手にとった。
そして右足、左足、うんしょとおなかまで、彼女のてのひらごとズボンをあげる。
「おお、これはズボンにてのひらをつっこんでいるいやらしい図に」
そんなことを言って彼女はまたけらけらわらう。
「ねーそれよりトイレいきなって。そろそろもれるんじゃないの」
そう言って背中のうしろでけらけら笑う彼女を、ひじでこつんとつついてやる。
するとくすくすわらってそうだね、なんて言って、わたしの彼女はこうささやいた。
「こっちの方が触り心地が良くって好きv」
「あっそ」
「もっとまるっこいほうがかわいいって。」
そう言ってかすめるように頬にちゅっとキスひとつ。
あーもれるーなんていって、トイレにばたばたと入る彼女を見送って、わたしはちょっとへたりこむ。
ああ、そんなことをいわれても。
熱い頬にてのひらそえて、うつむいた視線の先にはありえない数字。
そう。体重計のありえない数字。
「いくらそんなこと言われても譲れないもんがあるっていうか…」
そんなことばをつぶやいて、わたしはよいしょと立ち上がる。
レッツポジティブ、そうだなあ。
ま、さわりごこちがいいってことで。
ゆるゆる体重をへらしてこーか。
「あーでもーさやかならふとっててもやせててもかわいーよー」
なーんて、ごごーっと聞こえるトイレの水音とともに聞こえてきたことばをききながら、上着をてにとり、わたしはいきおいよく頭からかぶる。
レッツポジティブ、そうだなあ。
でもそんなことばにあまえちゃいけない。
「やっぱ美しくいたいじゃない」
すきなひとのためにもね。
ゆるゆる体重をへらしてこーか。
そうこころのなかで決意して、わたしはうおーとこぶしをあげた。
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え?レッツポジティブかんけいない?デスヨネー
「ブルーエルフィン」の栗鼠乃太郎さんのつぶやきから。りすたんにささげます。
ネガだといいながらも律儀にまいにちむりやりポジティブに変換してるあなたがすごくいとしいっす。
(2009/01/25)
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